◆◇◆猫とわたし:vol.04◆◇◆

 3匹目のチャーちゃんを拾ったのは92年10月だった。
 雨上がりの夜、近所を歩いていたら「ニャア、ニャア」鳴いている子猫がいて、立ち止まって、
 「どうしたの? 迷子になっちゃったの?」
 と話しかけていたら、その言葉が終わらないうちに私のジーパンをよじ登ってきた。
 チャーちゃんはとびきり人なつっこくて甘えん坊の陽気な猫で、目が覚めている間じゅう私のそばを離れない。たぶん上の2匹が恋人同士みたいにぺったり くっついているから、チャーちゃんとしては猫より人間に頼るしかなかったということなのだろうが、毎日チャーちゃんに求められるまま何時間も遊ぶのが私は 楽しくて楽しくて、幸福すぎて怖くなるくらいだった。
 そして実際その幸福はいつまでも続かなかった。96年11月にチャーちゃんはウィルス性の白血病を発症して、12月19日に死んだ。私は泣こうとしても 悲しみが塊となって胸につかえていて声が出ず、とうとう声となって出た時には胸が痛くて、割れたかと思ったほどだった。
 というわけで、チャーちゃんとのツーショットは撮影できない。しかし、4匹目の花ちゃんとのツーショットも撮影できない。花ちゃんはお客さんが来ると、 ドーッとすごい勢いで走り去って私の部屋の本棚の裏のどこかに隠れてしまうのだ。正確な隠れ場所は私にもわからない。
 花ちゃんは妻のお母さんのお墓参りに行った時に拾った。99年5月1日。段ボール箱に入れて帰ったのだが、鼻風邪をひいていて匂いがわからないから食べ 物に反応せず、4時間も5時間もただ静かに眠り続けているだけ。しかしそのままでは死んでしまうと獣医師に言われて、無理矢理口を開けてマグロの刺身をね じり入れたら、何回目かに突然自分から食べ出した。その瞬間は生の歓びそのものだった。
 それからはもう毎日、最初の夜が嘘のような大暴れ。私と妻のことも先住のペチャのことも縫いぐるみも手当たり次第に噛みつく(ジジは怖いので噛みつけな かった)。棚や机の上にある物は全部前足で払い落とす。お客さんが来ていてもご機嫌で、一人であれやこれやと格闘して遊んでる。……それが満1歳になった 頃、急にお客さんが怖くなってしまった。
 が、それは来客時限定の話で、普段はやっぱり暴れん坊だ(だいぶまともになったけど)。ペチャは2歳で子猫が来て、その世話をするために大人になってし まった。でも、花ちゃんは自分より下の猫がないから、いつまでたっても子猫でいられる。猫とは(人間も?)そういう動物らしい。


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