◆◇◆猫とわたし:vol.03◆◇◆

 2匹目のジジが来たのは89年10月。妻の親友で、1匹目のペチャを最初の1週間育ててくれた人が公園で犬を散歩させてい た時に、ゴミ箱の脇に弁当箱に入れて捨てられていた子猫を犬が発見したのだ。そして2週間後に私達のところに来た。推定生後1ヵ月。
 小さい小さいジジの鳴き声が聞こえた途端にペチャは箪笥の裏に逃げ込んでしまった。ジジは発育が遅れていて、ジジジジ、ジジジジ……まるでゼンマイ仕掛 けみたいな不器用な動きで、畳の上を這うように歩くだけ。しかし「ジジ」の名前の由来はそれではない。89年といえば『魔女の宅急便』の公開時期、あの黒 猫がジジだったからその時来た黒猫はもうジジしかない。
 ジジはまだ自力で食餌も排泄もできなかった。猫用ミルクをお湯で解いて哺乳瓶で飲ませて、次にお尻の辺りを脱脂綿でツンツン刺激して排泄を促す。しかし これがうまくいかない。母猫なら簡単にできるが脱脂綿のツンツンでは排泄の刺激にならない……。
 一方、箪笥の裏に逃げ込んだペチャはどうなったか? 24時間ずうっと隠れっぱなしだったが、さすがに空腹で出てきた。段ボール箱の中にいる子猫のこと はしばらくは見て見ないふりだったが、翌日、突然狭い段ボール箱に入って、やおらジジのお尻を嘗め始めた! そうしたら、オシッコとウンチが出る出る。そ れをペチャは母猫みたいにきれいに飲み込んでゆく!
 ペチャはオスだ。しかし思うに猫はオスメスに関係なく、自分がしてもらったことを子猫にしてあげるんじゃないだろうか。ペチャも自力で排泄できなかった 時に、妻の親友の家のゲンちゃん(こちらはメス)という黒猫に嘗めてもらって出るようになった。
 それからはペチャはジジを母のように可愛がり、兄のように遊んだりいじめたり。そして1年後くらいからはべったりラブラブの恋人のようにもなった。89 年からずうっとそんな関係がつづいていて、もうじき18年! 凄いことだ。
 『魔女の宅急便』のジジはオスだけど、うちのジジはメスだ。でもジジって、女の子の名前だと思う。というかジジは名前も性別も超えて個性的な猫だ。
 意思がとてもはっきりしていて嫌なことは絶対嫌。でも子供が家にくると我慢してその子の相手をする。額が他の猫よりはっきり出ていて前頭葉が発達してい るらしい。だから行動計画を立てられる。つまり普通の猫のようにちょこまか動かずに用事をまとめて済ます。結果、運動不足になって、ご覧の通り太ってし まったのだった。


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