◆◇◆朝顔、寒空に咲く◆◇◆
神奈川新聞2007年11月26日(月)リレーエッセイ「木もれ日」

 時期外れの話題ですが、今年の夏、朝顔を育てた。私の家は寝室に朝日が直射して、暑くて暑くて寝ていられない。それでベラ ンダで朝顔を育てて、緑のカーテンにすることにしたのだ。選んだ種類は「ヘブンリー・ブルー」という西洋朝顔。インターネットで調べたところ、西洋朝顔は 猛々しいほどに葉を茂らせて、花も最盛期には一株で毎日百輪ちかく咲く。
 苗を五株買ってきて、ツルを這わせるネットを張ったのが五月末。西洋朝顔は青一色なので彩りに日本の朝顔も六株。六月のあいだ、朝顔は和洋ともに「これ で夏に間に合うのか?」と思うくらいゆっくりしか成長せず、そのうちに葉がちぢれ出した。ハダニがついたのだ。天然成分の殺虫剤を噴霧したが、葉はちぢれ る一方。月が替わって七月になると今度は雨ばかり。朝顔たちはかろうじて茎は成長させているものの葉が全然育たない。特に西洋朝顔がひどい。殺虫剤が弱す ぎたか?
 緑のカーテンには遠く及ばなかったが、八月も後半になって日本の朝顔がようやくぽちぽち咲き出した。が、よく見ると昨日まであったはずの蕾がない。
 「あ、イモムシがいるじゃないか!」
 夜盗虫(よとうむし)というヤツだった。小さいのに食欲旺盛で、葉も蕾も全部こいつに食べられていたのだった。西洋朝顔なんか三株が全滅で、残る二株も ほとんどツンツルテン状態。それでも夜盗虫を取り除いたあとはまた少しずつ葉が出てきた。それからは順調で、日本の朝顔は十月まで毎日咲いた。中でも曙と いう種類は豪華で、毎朝咲くたびに嬉しくなった。
 で、西洋朝顔は? というと、なんと十月末から咲き出した。葉も蕾もほとんど食べられてしまったあと、九月くらいから成長した分だけで毎日五輪ずつ、十 一月半ばになると十輪ずつ。最低気温が十度以下の朝でも十輪咲いた!
 夜盗虫にもっと早く気づいていれば、西洋朝顔はどれだけいっぱい花を咲かせたことか。悔しい。残念だ。
 世間はすでにクリスマスのイルミネーションだけれど、寒空に咲く朝顔もいいんものだ。
 

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