◆◇◆////////////////////////////////////////////////////////////◆◇◆
◆◇◆    メールマガジン【いなむらL7通信】 第4号      ◆◇◆
◆◇◆////////////////////////////////////////////////////////////◆◇◆
                        2001/6/20 vol.04
                編集部より
みなさんこんにちわ。
ひきつづき、メルマガの感想やおすすめ文がちらちらとメ-ルで届いています。
ありがとうございます。
本当はみんな載せたいのですが、ちょっと説明不足だったり、何についての
おすすめなのかがわかりにくかったりするので、投稿するおすすめ文の他に、
ちょっとした自己紹介を盛り込んだお手紙をつけてくれると、うれしいです。
もちろん、文法がまちがってるとか文体がなんかちょっと、、など、
文句なんて言いません。(あ、言うこともあったわ)
保坂さんを笑わせてくれる、もちろん泣かせてくれてもいいけど、
おもしろくって、個性的なもの、待ってます。
そういえば、今回の次週特集予告タイトル、
<現代に生きる荒井靖水の古の音の世界>は、悪い文章の見本だね、、
とがぶんさんから言われてたんだけど、さて、どこがどう悪いと思う?
今回は第2号の訪問で紹介した写真家斎門富士男さんの奥様りょうこさんが
ネコラムを寄せてくれました。さすがに、たくさんの猫が登場します。
そうそう斎門さん、先頃、「第32回講談社出版文化賞写真賞」を受賞され、
6月20日より銀座コダックフォトサロンにて記念写真展を開いているそうです。
ゲスト劇場は科学者よさん、彼女のHPの日記はとーってもおもしろい。
えぞももんがさんのおすすめは馬、次号につづく、、になってます。

感想、保坂さんへの質問、おすすめ文はこちらまで(keito@k-hosaka.com)
========================================================================
■■■          芥川賞作家・保坂和志公式ホームページ        ■■■
■■■          http://www.k-hosaka.com            ■■■
■■■   未発表小説『ヒサの旋律の鳴りわたる』をメール出版中!  ■■■
■■■    http://www.k-hosaka.com/sohsin/nobel.html      ■■■
========================================================================
★☆★----------もくじ--------------------------------------------★☆★

■今月の特集【訪問】
 産婦人科医師 対馬ルリ子(都立墨田病院周産期センター産婦人科医長)
■連載【小説論番外編】vol.05 『保坂は虫なんだよ』 保坂和志
■連載 ゲスト劇場 「へなちょこ研究者の日常」よさんの巻
■今月の【わたしのオススメ本】(オススメ人)
 ◆「イバラード物語」(青心社) 井上直久 1985年(おくい)
 ◆優柔不断術・赤瀬川原平・毎日新聞社(ミワノ)
■今月の【わたしのオススメ映画・舞台・音楽】(オススメ人) 
 ◆「空気公団」バンド(そのは)
 ◆「ヤン・シュヴァンクマイエルの不思議な世界」ダゲレオ出版(スコ太郎)
■今月の【わたしのオススメあれやこれや】
 ◆日本酒プロデューサー関矢健二氏のお酒(花田守)
 ◆馬! (えぞももんが)
■ネコラム 「猫ばなし」斎門りょうこ
■連載【稲村月記】vol.04 「フェイクな風景」 高瀬がぶん
■保坂和志の『質問保箱』
■連載【興味津々浦々】vol.05「ジャパニーズ・ガウンの巻(4)」春野景都
■編集後記
★☆★--------------------------------------------END-------------★☆★
●********************************************************************●
               ★次号特集予告 2001/7/20 配信予定★
      <現代に生きる荒井靖水の古(いにしえ)の音の世界>
                     (薩摩琵琶奏者)
身近な音じゃないのに、聞いていると、なつかしい気持がしてくる時があって、
靖水さんの琵琶を初めて聞いた時がそうだった。彼が作る曲は、けっこう劇的
で力強く、絶妙に細かいテクニックがなんだかジャズっぽい。新しい試みをい
つも考えているようでいて、話すとそうでもないような。力のぬけ加減がすご
くいいんだよね。関係ないけど、彼のおばさんは樹木希林、とぼけた感じがち
ょっと似てるかも。
彼の琵琶の世界、おたのしみに!
●********************************************************************●
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆今月の特集◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
             
■【訪問】産婦人科医師 対馬ルリ子
            (都立墨田病院周産期センター産婦人科医長)

今回、産婦人科医であるルリちゃんから、話を聞くということで、あらためて
彼女の近頃の仕事をチェックした。彼女は実際に臨床医として月に300時間
以上働き、週にニ回は当直をし、そのうえで、NHK のテレビ出演、LEE,クロワ
ッサンその他の雑誌の取材を受けるだけではなく、定期的に専門誌の執筆もこ
なし、また、1997年に発足された「性と健康を考える女性専門家の会」の副会
長としての活動もはんぱじゃなく忙しくって、しかもふたりの子持ち。毎日、
化粧をおとすひまもなく朝をむかえるのもざらというルリちゃんとは、20年来
の親友なんだけれど、思えば、学生の頃から、彼女は超多忙だった。ロックバ
ンドのキーボードをやってて、派手なスポーツカーにのって、いつも男の子を
ひきつれて遊んでいたことも忙しさの原因ではあったけれど、彼女は、10代
の医学生の頃から信じられないくらい、女性の性のついて問題意識をもってい
て、20年前の「性教育研究」という専門誌の座談会に出席して意見を言ってい
るルリちゃんの言葉は、今のわたしが読んでもスカっと明快なんだよね。

・・・・・・つづきはWEBページで・・・・・・
◆◇◆この続きは参照写真付きの、以下のWEBページでお楽しみ下さい◆◇◆
        http://www.k-hosaka.com/inamura7/ruri/ruri.html
--------------------------------END-------------------------------------
★********************************************************************★

■連載【小説論番外編】vol.05 『保坂は虫なんだよ』  保坂和志

 友達と電話でしゃべっていて、「保坂は虫なんだよ」と言われて、言われた
途端に私はピンッときた。
 その友達は、中学高校の同級生で、ものすごい昆虫マニアで、結婚式の祝辞
でも「虫のちぎれた脚のひとつひとつを繊細にピンセットでつまむように……」
なんてスピーチをしてしまうくらいだから、彼が「虫」というときには、マ
イナスの意味が含まれていない。だから、私は「カツン」ときたのではなくて、
「ピンッ」ときたのでした。
 蟻とか蜂とか、虫というのは一人一人は単純な作業で部分しかしていないの
に、全体をみるとひじょうに複雑なものを作り上げる。これは「小説を書く」
という行為にとてもよく似ている。小説を書いているときというのは、部分の
ことしか考えていない。いまここで部屋の中には何があるだろうとか、窓から
何が見えるだろうとか、彼のこの台詞に対して「ぼく」はなんと答えるだろう
……、というような部分=その場のことしか考えていない。しかしそれが不思
議(?)なことに、全体として統一感のある小説になってゆく。反対に、風景
のいちいち、会話のいちいちを小説の全体=テーマと関連させるようなことを
考えたら、見え見えのろくでもない小説しか出来上がらない(ありがちなこと
ですが)。
 だから私は「虫なんだよ」と言われて、とても納得することができた。
 では、そういう風に部分の作業だけをしている小説家の書くものが全体とし
てなんらかの統一感を醸し出す理由はなんなのだろうか? と言われたら、そ
れは、蟻が一匹一匹は部分の単純作業しかしていないのに全体としての作業を
完成させる理由がわからないのと同じようにわからない、としか答えられない
かもしれない。
 が、統一感というのが一種の幻想のようなものだという可能性はある。統一
感というのは、全体のプランがさきにあるのではなくて、部分がきちんと作ら
れることによって、生まれてくるものかもしれない。蜂は巣を作るときに細か
い部分を作るだけだけれど、部分の形はほぼ等しい。部分の形がバラバラだっ
たら統一感を感じないかもしれない。統一感とはそういう風に、じつは、部分
に由来している感想なのかもしれない。蟻の巣となると形はもっと不定形にな
る。そこにはじつは統一感も何もなくてただ広がっていく運動のようなものが
あるだけで、それが蟻の巣だと思っているから、「蟻は作業を分担している」
と思い込んでいるだけなのかもしれない。

 彼に「保坂は虫なんだよ」と言われて、ピンッと反応したのにはもうひとつ
わけがあって、私はいま書いている小説のところどころで虫のことを考えてい
た。野球やサッカーをみている観客が熱狂するとき、一人一人は一人ずつの反
応しかしていないけれど、全体として統一された反応になっている。応援は歌
とか振りとかいろいろルールによって動いているけれど、それも何も、ホーム
ランの瞬間、ゴールの瞬間のいっせいに起こる反応が基盤となっている。
 人間は母親の子宮の中で生物としての進化=系統発生を繰り返すと言われて
いるけれど、その過程に虫は含まれていない。ということは、虫は哺乳類につ
ながってくる進化とまるっきり別系統だということなんだろうか。しかし、ス
タンドにいる人間の反応の統一され方は虫と比べるのが一番ふさわしいような
気がする。
 と、私はそんなことを考えているところだった。この考えがこれからどうい
う風になっていくかまだ私自身にもわかっていない。地球上ではいまは間違い
なく昆虫が一番反映しているが、恐竜の時代の最中もそれ以前も、地球はきっ
と一貫して昆虫の星だったんだと思う。ひとつの種がいくつも環境に適応でき
るような体になるのではなくて、環境に適応できるように細かく種を分けてい
く、という戦略の方が有利なのが地球という星で、そういうことがいろいろな
示唆を与えてくれるのではないか……と考えているのだが。
--------------------------------END-------------------------------------
★********************************************************************★

■連載 ゲスト劇場 よさんの巻
    へなちょこ研究者の日常『週末の過ごし方』

 わたしは仙台に住んでいる。わたしが仙台に住み始めたのは進学した大学が
仙台にあったからで、面白いと思ったことをして思わないことはしないという
怠惰な学生生活を送っていて、大学で専攻していた生物学の研究は面白かった
からやめる気もなくててろてろと続けているうちに気が付くとそのまま大学に
居残って一日6時間勤務のパートタイム研究者になっていた。
研究は面白いとはいっても元来怠け者なので貰っているお金以上に働く気もな
くて、休日も仕事にいそしむ多くの研究者や学生たちを横目に、気分が乗らな
い限りは土日は躊躇なく休む。そしてそんな休日はといえば最近は釣り三昧な
のだけれど・・・・・・・・・・・・

 今回は写真付きエッセイですのでこのつづきは下記のURLでお楽しみ下さい。
 http://www.k-hosaka.com/inamura7/620yo/yosan.html
---------------------------------END------------------------------------
●********************************************************************●
   まぐまぐ版「いなむらL7通信」配信登録・削除ページのご案内
         http://www.k-hosaka.com/maga.html
上記URLで登録・削除ともできますが、創刊号0号より申し込んだ記憶がない
にもかかわらず配信され、尚且つ、そんなもの読みたくない!、という方が
おりましたら、ごめんどうでも以下メルアドまで「よせ!」とメール下さい。
また、こちらの手違いで二重配信されている方がおりましたら、これまた誠に
申しわけございませんが、「やめろ!」と、メールにてお知らせ下さい。
          gabun@k-hosaka.com 高瀬がぶん
●********************************************************************●
          
          今月の【わたしのオススメ本
          
■「イバラード物語」/青心社 井上直久 1985年
宮崎駿の映画「耳をすませば」の幻想シーンにこの本の舞台であるイバラード
の世界が出てきてるから、けっこうおなじみかも。この本はそのイバラードの
中での住民たちの生活を描いたマンガで、かわいらしい魔法がたくさん出てき
たりしてとてもおもしろい。
中でも、自分の兄が撮影した浜辺が写ってる一枚の写真を手がかりに、ほとん
ど記憶のない兄のことを知ろうとする少女がイバラードを訪れる話がとても良
い。強く想ったものが形になって見える「思念像(ソルマ)」という魔法を使
って、一枚の写真からその写真に写ってる対象の周囲数メートルを再現するシ
ーンは、あんまり味わうことの出来ない類の感動を与えてくれる。
写真はただそれだけでも充分に魔法みたいなものだとおもうし、眺めるだけで
世界が脳の中で再出現してくる感じがあるけど、魔法で本当に再出現させちゃ
うところに夢のような楽しさがある。というか写真をみるときには誰もがそれ
を夢みてるのかもしれないなあ。(おくい)

■「優柔不断術」赤瀬川原平/毎日新聞社
「赤瀬川原平」の名前を聞いて、「模造千円札裁判」やら「トマソン」やらを
思い出す人と、「老人力」やらを思い出す人とがいるだろうけれど、私は圧倒
的に前者のほうだった。ネオ・ダダの現代美術家。後者のほうはセミ・リタイ
ヤ後の活動かななんて想像を勝手にしていて、だけどある日うっかり読んでし
まった。優柔不断の気弱さを、気弱な分析でとくとくと語り続けて、肩の力が
がくんと抜けちゃう。何とも情けなく、ここちよい本です。もちろん赤瀬川節
は無くなったわけじゃなかったようで、熟成されて(むしろされすぎたくらい
で)とろけそうになってる状態に、気持ちの良い年のとりかたをしてきたんだ
ろうなと思わせてしまいます。
そんな確信犯的な彼のわりあい最近の本が、昔、路上観察学会に入りたかった
私のブームになっているんです、ちょっと。(ミワノ)

         今月の【わたしのオススメ映画・舞台・音楽
         
■「空気公団」バンド
空気公団。この名前に好感を持つ人は音も気に入ると思うし、ジャケットを見
て「いいな」と思う人はきっと音も好きなはず。どこを取っても静かでやわら
かい感触の男女四人組のバンド。懐かしいような曲だけど、ちゃんと今の音と
して新鮮に響く。力を抜いてるようで緊張感に支えられた音。モコッとした音
質もヴォーカルの山崎ゆかりさんのぼんやり優しい声にはよく合ってる。歌わ
れる「僕」は町を歩き、君のことを考え、何かを忘れることなく、今日もここ
で待ち続ける。こんな毎日はどこにでもあるようでいて、日常的でもなかった
り。でもそれと気づかないまま過ごしてる日々の淡さってこんなだったかもし
れないとも思ったり。不思議と心地良くないものを排除するエゴみたいなのは
感じない。ほんとに何気なくやってるかのようにそこに在って、すうっと入り
込んでくる。楽しく悲しい毎日は穏やかでありふれていて特別で。そんな感じ
を録音できるのは稀有だと思う。(そのは)

■「ヤン・シュヴァンクマイエルの不思議な世界」ビデオ/ダゲレオ出版
(86分)
チェコのアニメの巨匠の驚異の7つの短編作品集。ぶっとびます。
実写、人形、コラージュ、静物や粘土が混合されたストップモーション・アニ
メですが、中でも好きなのは粘土アニメ。内蔵のリアリティが粘土を造形・変
形していく。『闇・光・闇』では、ぱっと電灯が点されると小部屋に目玉が転
がっている。次々と訪問してくる体の部分。それらがペチャペチャと融合した
挙句の果て・・・。
順調な対話がいがみ合いになりズタボロとなる『対話の可能性』。
『男のゲーム』では何と・・・。
共産主義政権が上映禁止処分としただけあり、かなり政治的寓意が読みとれる
が、特殊な立場に収まることなく普遍的であるのは、人間の条件への無類の観
察眼のためなのだろう。このおっさんかなりキている。というか同時代のチェ
コ民衆がかなりヤバイ状況に追いつめられていたことがビシビシ伝わってくる。
緻密な手作業と魔術的手法による筋金入りのブラックユーモアに触れたい人、
必見。(スコ太郎)

        今月の【わたしのオススメあれやこれや】
        
■日本酒プロデューサー関矢健二氏のお酒
関矢さんのプロデュースするお酒を飲み始めてかれこれ10年近くになる。
今、巷では変人が世の中を変えようと奮闘しているが、関矢さんもそんな変人
の一人だ。酒屋の看板娘を惚れたばかりに、明治から続く酒屋の跡を継ぐこと
になることに。酒屋なのに売れるのはジュースやビールばかり・・・だったら
“自分で旨い日本酒を造ってしまおう!”と決心された。日本酒のプロデュー
スというのを簡単に説明すると、1本のお酒が出来上がり、販売するまでの全
ての過程に関わり、且つ、細部にわたり徹底的にこだわる、ということだと思
う。東上野5ー10ー2にある関矢さんのお店(18時まで、日曜休み)には、常時、
数10種類のお酒が置いてある。ハズレはないので、はじめての人は是非ジャケ
買いする楽しみを味わってほしい。ちなみに最近ハマッテて、ダイプッシュな
のが、“吹毛剣(すいもうけん)”。超檄ヤバアイテム!即ゲット!だ。池袋
東武にも「関矢健二の酒工房」というお店があるが、東上野と同じお酒は置い
ていない。
う~ん、まさに関矢的ポリシー裂烈なのである。
その裏手にデパ地下にしては洒落た雰囲気のバーちっくなお店「楽」があり、
関矢さんのお酒が楽しめる。その他、関矢の酒が置いてある料理屋があるが、
それはまたの機会に。(花田守)

■馬!
週末はほとんど競馬に費やされる。土・日のどちらかは馬券師の飯田雅夫さん
と過ごす生活が続いている。稲村に住み始めた年からだから、ここに住んでい
る意味があるのかな?と思うときもある。振り返ると、飯田さんと親しくなる
ばかりか、まさか、お手伝いをすることになろうとは?の心境。-飯田さんと
出会うまでのこと-
3年前の夏、井村さんから届いた荷物の中に、緑色の模様がきれいな石が入って
いた。同封のメモには、「あなたと出会ったこの石を、可愛がってください」
みたいなメッセージと石の意味が簡単に書かれててあったと思う。なんでこの
石なのかな?と、全くピンとくるものがなかった。
1か月ぐらいが過ぎて、コンビニで立ち読みしてると、万馬券をたくさん当てる
タクシー運転手がいる、という記事があった。これだな、という冷静な感覚が
あった。この石は、別名:ギャンブル石、といわれているのだ。
しばらくして、飯田さんの馬券術の本が出た。銀座の馬券場にいるらしく、い
たら本にサインしてもらおう!と、いざ、銀座へ。すると、近くの駐車場であ
っけなく飯田さんを発見した。声をかけ、サインをお願いすると、「車に入り
ませんか?」と、思わぬお誘い。同乗のお兄さん(のちに、某民放局のえらい
人と判明)に悪いな、と思いつつ、車に入った。つづく?(えぞももんが)
---------------------------------END------------------------------------
★********************************************************************★
■ネコラム「猫ばなし」 斎門りょうこ
 猫写真いっぱいのWEBページでお楽しみ下さい。
 http://www.k-hosaka.com/inamura7/ryoko/ryoko.html
★********************************************************************★
▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
           読者投稿【わたしのオススメ】コーナーのお知らせ
 みなさんのお気に入りの本、映画、音楽、芝居、飲み屋、雑貨、漫画など、
 なんでもありのオススメ文を募集します。
 字数は本文のみ(題名、名前、出版社などは別)400字以内
 オススメの理由や感想など書き方は自由ですが、自分らしいものをお願いしま
 す。一応その月の〆きりは毎月10日、構成その他の都合上、必ず載るとは限り
 ませんが     keito@k-hosaka.com まで、待ってます。
▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
★********************************************************************★
■連載【稲村月記】vol.04(フォトコラム) 高瀬がぶん
◆「フェイクな風景」その1、その2
※写真付きWEBページでお楽しみ下さい。
 http://www.k-hosaka.com/gekki/gekki04/gekki04.html
---------------------------------END------------------------------------
★********************************************************************★
■保坂和志の質問保箱
私の独断で、質問はすべて匿名とします。名乗りたい人は、掲示保板で名乗っ
てもさしつかえありません。

●質問1 登場人物の名前はどうやって決まりますか。 

●質問2 装幀はおまかせですか。それともかなり希望をだしますか。
     もしくは今までの装幀にまつわるお話。
●質問3 保坂さんの好物はなんですか。どうしてもだめな物はありますか。

   ※回答は http://www.k-hosaka.com/Q&A/hobako2.html で。
------------------------------------------------------------------------
今までの「ジャパニーズ・ガウンの巻」を読んでいない方はこちらから。
 その1 http://www.k-hosaka.com/inamura7/ina01.html#silk
 その2 http://www.k-hosaka.com/inamura7/ina02.html#silk
 その3 http://www.k-hosaka.com/inamura7/ina03.html#silk
------------------------------------------------------------------------
■連載【興味津々浦々】vol.05
         「ジャパニーズ・ガウンの巻(その4)」春野景都
         
京都服飾文化研究財団を後にして、わたしたちは、京都に龍村平蔵織物美術研
究所を設立し、国内外で活躍されている織物作家龍村光峯さんの工房におじゃ
ました。光峯さんは伝統的な織物の復元・再生から、京都府民ホールや国立文
楽劇場、東宮御所のタペストリーなどホールや劇場に収める作品を数えきれな
いほど制作しているのだけれど、初代の龍村平蔵、彼のおじいさまは法隆寺に
ある獅子狩文錦の復元に成功し、その謎を追う話は「幻の錦」として本にもな
り、NHKでも放映され、教科書に載るほど、有名な話なのだ。
工房にいた染色の職人さんが、自然のものから実に様々な色を作り出せること
を説明してくれた。山梔子(くちなし)や福木(ふくぎ)など、見た目はただ
の枯れた木の枝なのに、出てくる色は信じられないほど鮮やかな黄色。かめ出
しの仕方によっては色に様々なバリエーションも生まれる。どこまでも勘と経
験が頼り、そうでありながら非常に正確な職人芸、染めにしても織りにしても、
これから、どのような形で残され伝えられていくのだろうかという思いが湧い
てくる。
とにかく、沢山のすばらしいタペストリーを見せていただいた後、お茶室でお
いしいお菓子とお抹茶をいただき、工房を後にした。このお茶室、巨大な機織
り機がガラス越しに見えることから光峯さんの友人の高円の宮様が「機見(は
たみ)の席」と名付けたんだって。ほんと、ちょっと変わった趣きのお茶室だ
った。
夜は祇園で食事をした。ふらふらと散歩しながら、かわいらしい着物姿の舞妓
さんを見かけたんだけれど、丸い手鞠のような形の「割れしのぶ」という髪型
がとっても愛らしい。歌舞練場で都をどりが開かれているのがわかったので、
明日なんとか時間をみつけて見に来ようということになる。その前に、朝6時に
弘法市が開かれる東寺にいくために、はやめにホテルにもどって寝ることにし
た。
次の日は四月も末というのに、驚く程の寒さ、朝早いということもあるけれど、
やっぱり、東京とは気候が違うと実感する。持っていった下着から靴下からス
トールまで、身につけられるものはなんでも身体中に巻いて、弘法さんの骨董
市に向かった。ちょっと雨が降りそうな空模様だったけれど、テントに赤い毛
氈やビニールシートを敷いたお店が所狭しと並び、とにかく、盛大で品数豊富。
植木もいっぱい並んでいて、ピンクや白の花水木の大きな株がとっても安く売
られていて、近くだったら、買ったのにと、ああ残念。まずは入り口で腹ごし
らえ。ほんとはそんなつもりもなかったんだけれど、お手製の鯖の押し寿司と
おいなりさんを並べていたおばあちゃんの呼び声が、あまりにも優し気でつい
ふらふら、熱いお番茶もごちそうになってしまう。もうひとつ食べたいなと思
ったところで、「ほら、ゆっくりしてちゃだめよ」と、チョウ子さんにお尻を
たたかれて、満腹にならぬまま歩き始めた。その昔は骨董市というよりは朝市
だったということもあって、古美術品や古道具などに混じって、軍手やソック
ス、下着やホ-キなどの生活用品、山菜やお茶などの店も目につく。それにし
ても、反物やら、古い着物を山のように積んでいるお店のなんと多いことか、
さすが京都。その一角、信楽の壷、木彫りの地蔵さんが並んだお店で、色鮮や
かな絹糸が巻かれた木製の糸巻きを発見する。糸巻きといっても今の小さな形
のものではなくて、たぶん色見本に使われたんだと思うけれど、大きさは10×
15センチの長方体で、何種類かの色が一つの糸巻きに巻かれている。脇に書か
れてある漢字は、色つけをした職人さんの名前か店の名前だということなのだ
けれど、その中で、名前が焼き印で押されているものをひとつだけ発見。「焼
き印が押されたものは大正時代のものだよ」というので、購入した。そういえ
ば、鎌倉の古物屋で見つけた大きなまな板のような繭箱と、ガラス壜に入って
墨書きのラベルが貼られた繭。これも大正時代のものということだけれど、ど
ういう風にして使うものかわからない。ちょっと調べてみようかなと思う。
古い着物の山の中から、小千谷縮(おじやちぢみ)を見つけたチョウ子さん、
もうなかなか手に入らないものらしく、つかんだまま離さない。淡い色合いが
涼し気で上品な感じ。ちょっと普通じゃないくらい不思議な洋服も似合うのに、
ほんとは「未来に残したい日本人の美しい姿」の典型のように、地味目な着物
もすっきり着こなすチョウ子さんにぴったり。一方、エムさんはチョウ子さん
とは対称的、イタリア人みたいなはっきりとした顔のせいか、実際よりもずっ
と上背があるように見え、派手なものだったら、モダン、アンティーク、どん
なテイストも着こなしちゃう。だから、選ぶ着物も原色中心のエグいものばか
り。でも、どれを着てもすごく似合ってて、そのまんま洋服の上にひっかけて
歩き回ってもいいくらい。
散々迷った挙げ句、チョウ子さんは小千谷縮、エムさんはワイン色の着物、わ
たしは、手持ちのオレンジ色のインド更紗に合うような帯をひとつ買った。満
足、満足。弘法さんの市でも見たんだけれど、束になって売っていた派手な長
襦袢。真っ赤に白抜きの梅模様とか、紫色の竹模様など、今、着物の下にこう
いう目立つのを着ている人なんて見たこともない。でも、その日の午後に訪れ
た紫織庵では、明治、大正時代の長襦袢の資料が残っていて、ほんと、驚いた。
こんなに多種多彩な長襦袢があるなんて。
紫織庵に展示してあるものには、日本の古いデザインである花鳥風月から、フ
ランス人形やマージャンパイ、アルファベットにミッキーマウスと、これが本
当に長襦袢なのかと、頭を傾げてしまうものもけっこうある。なんでも、戦前
までの長襦袢は、こういう派手な友禅染めが主流で、それが、戦争のせいで工
場や職人がなくなってしまい、また、コストもかからないということで、無地、
あるいは色をつけても、ぼかし染めや、めだたない地模様が主流となり、現代
に続いているそうである。紫織庵では残されているデザインを忠実に再現して、
何百種類もの生地見本がおいてある。それを注文で作ってくれるというのだけ
れど、着物の世界もなんだか、けっこう自由な感じ、ちょっと、新たな発見で
うれしくなった。
その後、華やかな都をどりを見ながら、いつか、あんな派手な長襦袢も作って
みようかしら、と思いつつ、帰りの新幹線に乗るまで、こんどは、錦市場を中
心に歩き回り、お茶に漬け物、あなごに押し寿司とお腹もいっぱい、手荷物も
いっぱいで帰途についた。

京都から戻り、しばらくたった頃、小学校から、次女が蚕を連れたきた。なん
でも、授業で繭ができるまで育てるそうなのだ。ところがその授業に、父兄か
らちょっとした問題提起が。繭に色をつけるための実験についてなのだけれど、
そんな折、また、チョウ子さんから電話が入った。
「群馬の養蚕農家を見に行くわよ! 色付き蚕、憶えてる?」
ああ、そういえば、そうそう、もちろん憶えてます。それにしてもほんとに、
グッドタイミング。小学校で問題になってることに、なにか答えがみつかるか
もしれない。(つづく)
---------------------------------END------------------------------------
●===PR===============================================================●
   お友達メールマガジン【保坂和志拡散マガジン】のお知らせ。
    申し込みは→ http://www.din.or.jp/~akama/mm.html
作家保坂和志さんの作品を題材にしたメールマガジンです。でも書評のメルマ
ガではありません。保坂和志さんを研究(?)するメルマガでもありません。作
品の感想を書くことはあると思いますが、感想だけではありません。
それじゃいったい何なんだ? 発行人「あかま」のつぶやき? 読者の方との
交流? なんでもありのメルマガ? 発行人・ぴょんかつ、こと(あかま)
●===============================================================PR===●
■編集後記
庭の木のなかで一番大きなのはオリーブなんだけど、木が大きいせいか時々く
っつく虫も巨大。うす緑の二匹の芋虫もおもちゃのような質感で、うわっと声
をあげてしまったほど大きかったし、昨日、木の幹でのたのた動いていたカタ
ツムリもサザエのようだった。でも、初めてなんだけど、どうやらオリーブの
実がなりそうな感じ。どうやらというのは、ほんとにこれは実なんだろうか?
というほど、ちっちゃいから。直径2ミリの小さな緑色の玉は、果たして、あ
のオリーブオイルのパッケージの実みたいになるのだろうか? きっと、来月、
御報告できると思いますが、、ってそんなにたいそうなことでもないっか。
                             (けいと)
★当メールマガジンへのバナー広告だって募集しちゃいます!
 問合わせは→→gabun@k-hosaka.com
------------------------------------------------------------------------
発行人・高瀬がぶん/編集長・春野景都/スーパーバイザー・保坂和志 
〒248-0024 神奈川県鎌倉市稲村ヶ崎5-11-13
tel:0467-32-4439 fax:0467-32-4498 gabun@k-hosaka.com
------------------------------------------------------------------------
Copyright(C), 1995-2000 Bungate Web 高瀬がぶん
当メールマガジンに掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。
2000/06/20 vol.04 メールマガジン【いなむらL7通信】4号
-------------------------------AII END----------------------------------