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◆◇◆    メールマガジン【いなむらL7通信】 創刊0号     ◆◇◆
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                        2001/2/20 vol.00
               ごあいさつ
               
みなさんこんにちわ、発行責任者の高瀬がぶんと申します。
今月から始まったメールマガジン「いなむらL7通信」。
作家・保坂和志の公式ホームページの共同制作者であるBungate Webが発行す
るこのメルマガでは、保坂和志の周辺的な話題、猫の話題、読者の皆さんの
投稿・発言、インタビュー、対談などを中心に展開してゆきたいと思ってい
ます。
毎月20日の月1回の配信ですので、どうかよろしくお願いいたします。
また、どうしてもこれを言いたい! 告知したい! 質問がある! いちゃ
もんがつけたい! などの投稿は以下までお願いいたします。

         編集長・春野景都 keito@k-hosaka.com
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■■■          芥川賞作家・保坂和志公式ホームページ        ■■■
■■■          http://www.k-hosaka.com            ■■■
■■■   未発表小説『ヒサの旋律の鳴りわたる』をメール出版中!  ■■■
■■■    http://www.k-hosaka.com/sohsin/nobel.html      ■■■
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★☆★----------もくじ--------------------------------------------★☆★

■連載【小説論番外編】vol.01 「小説と意味」保坂和志
■連載【興味津々浦々】vol.01 「獣医さんの巻」春野景都
■連載【ネコラム】vol.01 「花ちゃんの片目は……」ほさか
■連載【稲村月記】vol.00 高瀬がぶん
■今月の【わたしのオススメ本】(文・オススメ人)
 ◆『Design of Doujunkai』(文・おくい)
 ◆『光とゼラチンのライプチッヒ』(文・よ)
 ◆『嬉しい街かど』(文・くま)
 ◆『そして私は一人になった』(文・あめ)
 ◆『インド日記 牛とコンピュータの国から』(文・そのは)
 ◆『チーズはどこへ消えた?』(文・ぴょん吉)

※この他次号からの予定としては・・・・

■【今月の見たり聞いたり】のコーナーを設け、特にオススメの映画・ビデオ
 ・舞台・音楽などを紹介してゆきます。
■インタビューと対談(保坂氏&???)をひと月毎に交替で掲載する予定。

★☆★------------------------------------------もくじでした------★☆★
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           ★次号予告★2001/3/20配信予定
 【対談】「保坂和志vs山田稔明(ゴメス・ザ・ヒットマン ボーカル)」
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◆小説論番外編◆ vol.01 「小説と意味」保坂和志

「保坂和志公式ホームページ」の方で、定期的に書きつづけていくつもりだっ
た「小説論」が、いくつかの事情で滞っているために、このメールマガジンで、
小説について考えていることを断片的に書いていくことにします。今回は「小
説と意味」です。
「意味」といっても、「小説が存在することの意味」とか「小説が書かれ読ま
れることの意味」のことではありません。

このあいだ綾辻行人の『時計館の殺人』というミステリーを読んだときに、最
後の謎解きのところで「時間論」というか「時間についての考察」がえんえん
と語られていることに驚いた、というか虚をつかれた。そこで語られる時間論
は殺人のトリックとは直接関係がない。もっと生硬な、つまりはいわゆる「青
臭い」時間論だったのだけれど、ミステリーという枠組みの中ではそれがあん
まり違和感がない。
「ここの主人は以上このような事情で、この建物を完全に外部と遮断して、建
物の中で外とは別の速度で時間が流れるようしたのです。そもそも時間とはど
ういうものでしょうか……」
と、やってしまえば、読者はそこに書かれている時間論をいくらでも「青臭い」
などと感じずに読んでしまう。この手法は謎解きのミステリー小説では少しも
珍しいことではないだろうけれど、ミステリーをほとんど読まない私にはとて
も新鮮だった。「こんなやり方があったのか」と思った。が、考えてみればS
F小説でも、こういう方法で「宇宙論」や「生命論」を展開することは珍しく
なかった。
ここで小説と意味の関係が問題になるのだけれど、その時間論は、『時計館の
殺人』という作品全体として語られているわけではなくて、作中人物の“ひと
つ”の考えとして語られている。作品全体の構造としてはあくまでも謎解きな
のだ。ドストエフスキーの小説でも、頻繁に「生と死の意味」とか「殺人の意
義」とかいうことが語られるけれど、これもやっぱり作品全体として語られる
わけではなくて、作中人物の“ひとつ”の考えとして語られる。
「生と死の意味」とか「世界とはどういうものか」というような、大きな問題
が、“作品全体”として語られると、『聖なる予言』とかシャーリー・マック
レーンの『アウト・オン・ア・リム』にはじまる一連の作品のように、ニュー
・エイジ系の本とみなされて、いわゆる文学とは位置づけられなくなってしま
う。
そこで文学や小説の定義が問題になってくるわけだけれど、ここではそっちの
問題には踏み込まない。それはとても専門的になるか、逆に曰く言い難い「わ
かる人には一言で済むが、わからない人にはいくら言葉を尽くしてもわからな
い」ような説明にしかならないだろう。ふつう人は、とても漠然とした基準を
持って、「あれは文学じゃない。これは文学だ」と言っているだけなのだ。そ
して、その基準は人によって微妙にズレていて、場合によってはものすごくズ
レている。
英会話の教師として、一番好まれるのは白人で、黒人はイマイチ、東洋系はか
なりヤバイ。白人だったら非英語圏の人でもいい。という日本人の偏見は、そ
のまま日本人の「アメリカ人観」を表わしているわけだけれど、そういう風に、
論理的に追究したら簡単にボロが出るような偏見や思い込みで世界を塗り固め
ているのが人間なのだ……。
で、話を意味の問題に戻すと、「意味」がもう一歩進むと「真実」ということ
になる。『聖なる予言』や『アウト・オン・ア・リム』が文学であるかどうか
にかかわらず、それを読む人は真剣に読む。「生きることの意味」なり「真実」
がそこに書かれていると思うから、文学以上に切実に読む。そういう読み方を
「稚拙な読書」と言うのは簡単だけれど、私はそういう本が待たれているとい
う現状は重大なことだと思う。
『忠臣蔵』だって現実にあった事件に取材したから、大ヒットして歴史的に定
着したのだ。『四谷怪談』だって、本当のことだと思われてヒットしたのだ。
『四谷怪談』を上演するときにはいまでもお祓いをするという話だし、女優の
太地喜和子が伊東の海で死んだときも『四谷怪談』に出演したことがワイドシ
ョーでは取り上げられていた。ベストセラーの『永遠の仔』だって現実とリン
クしていると思うからあんなにヒットしたのだ。それどころか、私の『季節の
記憶』を読んで、文学賞の選考委員の中にまで、私に本当に子どもがいると思
った人がいる。読者は、“現実味”を越えて“現実”を求めている。

だから? という展開は、このエッセイにはない。話はここで終わりです。こ
こから展開させることはいくらでもできるけれど(たとえば、「小説が全盛だ
った、フィクションをフィクションとして楽しむ近代という時代がむしろ特殊
だったのだ……」とか)、私は小説について考えすぎているために、展開しは
じめるとキリがなくなってしまう。これは一種の病気だと思う。だからここで
は敢えて展開しないで、ただ放り出すことにします。これからもこの調子です。

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■【興味津々浦々】vol.01 春野景都
 「獣医さんの巻」

どんな人が獣医さんになるのだろうか。わたしの長女は将来獣医になりたいと
いうのだが、この子の場合、動物が好きで好きでたまらず、幼稚園の頃から小
5の今まで、「大人になったら何になりたいの?」と聞かれると、決まって「
動物のお医者さん」と答えている。また、私の祖父は獣医だった。北海道の十
勝で家畜専門、馬のお産などが主な仕事だったが、好きかどうかは別として、
明治時代に秋田で生まれた祖父が東京の獣医学校に通い、そこから北海道に渡
るわけだから、並々ならぬ決意が伺える。そもそも獣医になる人というのはな
にか個人的に動物に対して強い思い入れがあるような気がするのだ。だから、
まさかなんとなく獣医大学に入り成りゆきでなってしまったというのはないだ
ろう、と思っていたら、たかだアニマルクリニックの小村吉幸先生はまさかほ
んとに成りゆきだった。東京世田ヶ谷生まれの小村先生は現在、鎌倉市大町で
奥様とともに開業しているのだけれど、高校時代はクラプトンやレッドツェッ
ぺリンにうつつをぬかすギター少年だったそうだ。
「入れるならどこでもいいかという感じだった。獣医大学も今より、ずっと学
費も安かったし、ぼくの大学は自宅から電車で通えたからね」
そうか、でも、大学時代に動物への愛に目覚めたりしたのね、きっと、と思い
きや、
「大学時代もギターばっかり弾いててね、1,2年の時なんて専門はチンプンカン
プン。手術の手伝いがおもしろそうだから外科の研究室選んだりしたんだけど」
と、あっさり。そんなんでいいの? とはもちろん言わなかったけれど、ちょっ
と、驚いた。しかし、この小村先生。実は保坂ホームページではかなり有名な
猫イチくんの命の恩人なのである。イチは夏に体調を崩し、その後、良くなっ
たり悪くなったりを繰り返していたのだけれど、寒くなったとたん、いきなり
動くことも食べることもできなくなり小村先生に診ていただいた。その時の体
重は2,4キロ、極度の脱水状態、貧血、そして、腎機能の低下、しかも、エイ
ズ検査は陽性だった。自力で食べることのできないイチは数日間、点滴を受け
続けた。
「一週間は点滴と、なんとか注射で口からごはんも入れましたが、はっきり言
って、かなり悪い状態で、このまま点滴しつづければ生き長らえることもでき
るかもしれませんが、自力で食べることができないのに、ただ、生かしておく
というのもこの子にとっても辛いことだと思います。住み慣れた家に戻って、
イチに生きようという気持が生まれ、春まで持ちこたえたらなんとかなると思
うし、そうでなければ、自分の家で死なせてあげた方がいいと思いますよ」
小村先生のはっきりとしたものの言い方は、不確実な期待や都合のいい推測で
入院を勧めていない点で、納得のいく言葉だった。というのも、実を言うとわ
たしと、このイチの飼い主であるがぶんさんはイチの入院について治療につい
て、思いあぐねていた。がぶんさん自身が生活に事欠くほど、お金がなかった
ということもあるのだけれど、動物にとってどこまでの治療が必要なのか、と
いうことで、もしも、寿命であるならば、自然に自分の居場所で命を終わらせ
ることのほうがイチにとってしあわせなのではないだろうか、などということ
も、実際、おいおい泣いたりしながら話し合っていたのだ。
ところで、小村先生、昔から特に動物好きという訳でもないと言うのだが、現
在はあんちゃんという捨てられていた犬一匹に、ぽん、こふちゃん、こぼちゃ
ん、よんちゃんという猫四匹を飼っている。
「ぽんはスリムであんまり食べなくていつも毛繕いばかりしてるナルシスト、
こふちゃんは小さい時に咳ばかりしてて風邪のウイルスで片目がやられちゃっ
てね、こぼちゃんはゴミ箱に捨てられていた猫でくっちゃねくっちゃねしてて
太ってるから体のなめる場所が決まっててそこばっかり禿げてるんだよね。よ
んちゃんは、同じ時に生まれた猫のうちでこれだけが、風邪ひいて目やに鼻水
ズルズルで、顔の毛がずたずたに禿げていてもらい手がなくてね、でも、結局
これが、みにくいあひるのこで大きくなったら、一番きれいになっちゃったん
だよ」
もちろん、実際の話は、この10倍くらい長い。人はやっぱり正直なのだ。
好きな話は長くなるんだと思う。ただ、人間でも動物でも命に関わる仕事はき
れいごとではすまされない。だからこそ、獣医という仕事を好きとか、嫌いと
いう範疇でとらえることに抵抗を示すのかもしれない。とりとめのないおしゃ
べりのあと、小村先生はちょっと、真面目顔でこうおっしゃった。
「運命が定まっているろうそくの火を長くさせることはできないけれど、囲い
をしてやることはできる。無知ということで、たくさんの命が昔は死んでいっ
たけれど、無理矢理生かすということではなく、その時死ななくてもいい命を
助けることはできるんです。」
あれから、二ヶ月が経つ。御無沙汰している先生に近況報告でも、と思う。
・・・・小村先生、今、イチの体重は3,5キロになりました。あの時のイチの姿が信
じられぬ程、回復しています。身体も丸くなり、外に出て走ったり、木登りま
でするようになりました。なんとか、春までがんばれそうです。のんびりとし
た顔でひなたぼっこをしているイチの顔を見ていると、ただ訳もなくうれしく
なってきます。                    春野景都より

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■ネコラムvol.01 (ほさかの巻)
 花ちゃんの片目は……

花ちゃんは片目だ。獣医さんの話によると生まれつき左の眼球が育たなかった
らしい。
片目であることの不便さや不都合さについて、私も妻もはじめの頃は心配した
りあれこれ想像したりしたけれど、本人はいっこうに意に介さずに元気に走り
回り、乱暴にぬいぐるみに噛みついたりしている。
釣竿のような棒の先から糸が垂れてその先に鳥の羽がぶら下がっている UL
TIMATE FEATHER CAT TOY(究極の羽の猫オモチャ)と
いうアメリカ製のオモチャがあって、花ちゃんは毎晩それで私と一緒に家の中
を走り回っているけれど、花ちゃんは鳥の羽を狙うのではなくて、階段を上が
る私の足許を駆け抜け、竿からぶら下がっている鳥の羽も追い越して、ひたす
ら走り回っている。どうも花ちゃんは狙いを定めて獲物に襲いかかるよりも、
ただ走り回る方が性に合っているらしい。
一人で遊んでいるときはだいたいドングリの実を転がしている。フローリング
の床の上だとドングリがカラコロカラコロ音がする。反響のいい場所ではガラ
ゴロガラゴロかなりやかましい音がする。ペチャもジジも、死んだチャーちゃ
んも、花ちゃんみたいな荒っぽい遊び方はしなかった。猫はだいたい音を立て
ずに陰険に(?)遊ぶものだと思っていた。
花ちゃんはやっぱり見ることがあんまり得意じゃないのかと思う。獲物に狙い
を定めるよりただ走るのが好きなのも、ドングリの音でやる気が煽られるのも、
視覚の弱さが原因なのかもしれないと思う。しかし、猫だから訊くことができ
ない。
――と、思っていたのだけれど、この、「猫だから訊くことができない」とい
う言い方は違うんじゃないか、と思うようになってきた。
「私が〈赤〉と感じているあの色の感じは、他の人に見えている色の感じと同
じなんだろうか」(A)
という疑問は誰でも一度は感じたはずだ。
「私に〈赤〉と見えている色が、他の人には〈緑〉と見えている色ではない、
という証明がどうやれば可能なのか」(B)
という疑問と言い換えてもいい。実際、色盲の人はそれと近い状態を生きてい
るけれど、色盲検査をするまで気がつかない(いや、やっぱりAとBは違う。
Bは検査によって証明可能だけれど、Aはやっぱりきっと証明不可能だ。だか
ら話をAの方に限定することにして……)。人間にかぎらず動物の個体の感覚
は、個体内部で自足して、ただそれを受け入れて生きている。
人間は180度よりやや狭い角度のものを〈視野〉と呼んでいるけれど、馬の
視野は300度以上ある。一般に、草食動物は身を守るために視界が発達した
ので視野が広く、肉食動物は獲物に狙いを定めるために視界が発達したので視
野が狭い。しかし、人間は180度よりやや狭い角度の視野を不便と感じるこ
とはめったにない。
人間という存在は特殊だとつくづく思う。「個体内部で自足して、ただそれを
受け入れて生きている」動物の中で、人間だけが周囲にいる同類を真似たり同
類と自分を比較したりというサイクルの中に身を置いて、〈人間〉としての自
分を完成させていく。〈私〉という意識が芽生えるのも、きっとこのサイクル
の中でのことだろうが、いまは〈私〉談義の場所ではない。
そういうわけで花ちゃんは自分の片目の視野を不便と感じず、そういうものだ
と思って生きている。片目であることを気にするのも花ちゃんにしてみれば大
きなお世話というもので、私たちは花ちゃんの行動をすぐに片目に結び付けて
考えてしまうけれど、両目だったとしたら花ちゃんが羽を狙ったりするのがも
っと好きだった、という証明は誰にもできない。活発で雑で荒っぽい性格なの
が花ちゃんで、花ちゃん自身も私たちもそういう花ちゃんの性格を生きている。
ペチャはちょっと迷惑しているけれど、ジジはそんな性格も一喝しておしまい。
ペチャはお人好しでジジは強い。

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■【稲村月記】vol.00 高瀬がぶん

とりあえず「いなむらL7通信」の発行責任者として、創刊のご挨拶みたいな
そうでないようなことを、意味がないけど可愛い写真付きで、ひとこと述べさ
せていただきます。従って今回はvol.00ということで。
(一応、この『稲村月記』次号からはフォトエッセイみたいなことにするつも
りですが、うーん適当に言ってます)
↓おまけ写真
http://www.k-hosaka.com/inamura7/unko.html

新聞をとるのをやめてからおよそ半年。いったんやめてしまうとこれが全然困
らない。ニュースはテレビで見ればいいしと、そう思ってやめたのだが、間の
悪いことに今度はテレビがぶっ壊れてしまった。もともとは映りが悪いからと
蹴飛ばしたのがいけないのだけれど、なぜか急に画面が緑がかったモノクロー
ムになってしまった。それだけならまだいいのだが、しばらく同じチャンネル
を見ていると、およそ五分ほどで画像が消え、あとは緑と赤のノイズの嵐が吹
くだけになってしまうのだ。でもって再び叩くと、運がいいときは元に戻るが、
たいがいはダメで、そうなるといったん電源を切って、三十分ほど経ってから
再びスイッチを入れなければ元に戻らない。
そんなこんなで、結局テレビも見なくなっておよそ二ヶ月が経つ。
そして今日(2/16)、久しぶりにテレビのスイッチを入れてびっくりすること
が二つあった。
緑色の顔をした久米宏に驚いたわけではない。ニュースの途中で、アメリカ大
統領のコメントが入ったのだが、その顔写真のキャプションに「ブッシュ大統
領」と書いてあったからだ。
「あれ? いつの間にブッシュが大統領になったんだぁ! とびっくりしたの
である。それが一つ目の驚き。
いやぁ、新聞もテレビも見ないとはいえ、その間に起きた様々な事件の情報は、
例えば、動物いぢめで逮捕者が出たとか、行方不明だったイギリス人女性の遺
体が見つかっただとか、米潜水艦と日本の舟がぶつかっただとか、そういうこ
とはなんとなく誰かから聞いたりネットの掲示板で知ったりしていたのだが、
あの揉めていたアメリカ大統領選の結果、ブッシュに決まったということはだ
~れも教えてくれなかったし、たまたまかもしれないけれど、ネットをしてて
もそのことを知る機会はなかった。
で、二つ目の驚きは、そんなことも知らなかった自分がやっぱりまったく困っ
ていない、ということであった。
自分にとって必要な情報はなにか? ということを考えさせられる出来事では
あった。何がなんでも情報を仕入れればよいというものではないってことを肝
に銘じておかないと、紀伊国屋書店あたりに行った日にゃぁ、とんでもなくバ
カ臭い本を、ステキな装丁とかに騙されてすぐに買ってしまうハメに陥るに決
まっている。まったく油断も隙もない世の中である。
といってるそばから、果たしてこのメールマガジン「いなむらL7通信」が、
貴方に必要な情報かどうかは・・・・定かではない。というよりむしろ、なくても
絶対に困らない情報であると保証しちゃいます。
そういうわけですから、ここはひとつ、世の中の最新情報をゲット! なんて
ふとどきなことを考えないで、のんびりじっくりと楽しんでお読み下さい。
それでは今後もよろしく。

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 「いなむらL7通信」配信登録・削除ページをただいま制作中です。
  詳細は後日「保坂和志公式ホームページ」にアップいたしますので、
  今しばらくお待ち下さい。ごめんどうですが直接メールをいただければ、
  こちらで登録させていただきますのでよろしく。
  尚、こちらの手違いで二重配信されている方がおりましたら、誠に申し
  わけございませんが、「やめろ!」と、メールにてお知らせ下さい。
          gabun@k-hosaka.com 高瀬がぶん
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■今月の【わたしのオススメ本】

◆『Design of Doujunkai』 建築資料研究社
この本は形としては建築写真集になっていますが、建築写真にありがちな硬質
な感じの写真はなく、春の自然光を使って撮られたとおもわれる明るい写真が
多く掲載されています。大正時代に造られて今も都内に点在する同潤会アパー
トにまつわるさまざまな視線を昼の淡い光のうちに切り取っているんですが、
懐かしい、とかそういうのではなく、自然光の中で視線がほぼ生のまま定着し
た、という感じです。ドアや階段や屋上や植木鉢といった細部の写真を見ると
まるでそれらが自分の見たことのあるドアや階段や屋上や植木鉢のように感じ
られるほどの親しさがそこにはあって、眺めているととても気持ちいいのです。
(オススメ人・おくい)

◆『光とゼラチンのライプチッヒ』多和田葉子著 講談社
例えば仙台には「イズイ」という方言があって、たぶん「居辛い」に由来して
いると思うのだけれど、「居辛い」とは意味が若干重なっていても明らかに違
っていて、イズイという感覚は標準語では言い表しようがない。ドイツでドイ
ツ語で生活している多和田さんのこの短編集は日本語で書かれていて、それら
の作品の印象は作品ごとに随分異なるのだけれど、日本語では言い表せない言
葉と言葉の隙間にあるはずのもの(イズイも標準語の隙間にあるものだと思う)
がいつも意識されているように感じられて、楽しい。(オススメ人・よ)

◆『嬉しい街かど』武田花著 文藝春秋
武田泰淳はおいといて、百合子&花の母娘を私は大好きだ。花さんだけは生き
ていて、しょっちゅう海岸や工場街へ写真を撮りに出かけてる。花さんは煙突
や猫好き。大人の女が煙突のようなシンボルを撮ってると不信がられる。猫も
ノラなので人相がスコブル悪く、太り過ぎもしくは痩せ過ぎでぶっさいく。写
真はなぜかモノクロで、なぜか人間を写したものがない。なのに、ふらふらし
てる花さんにいろんな人が寄ってくる。気持ちのさばさばするような景色を好
む花さんが、書く文もまさにそんな感じだと思う。海岸でアヒルの集団に追い
掛けられて遊ばれてても、実は木村伊兵衛賞受賞写真家で、飼い猫はくもです。
(オススメ人・くま)

◆『そして私は一人になった』山本文緒著 KKベストセラーズ
タイトルを思わず口に出してみたくなる。もし失恋していたり、今の自分に悩
んでいたり大勢の中にいても孤独だと感じている時だったら、きっと手に取っ
て頁を開かずにはいられないだろう。
今年直木賞作家となった山本文緒さんが4年前に綴った日記である。大きな不
幸も劇的な幸福もなく淡々と書かれているけれど、どこか自分と同じじゃない
かと思えてくる日常を、ほんのちょっとだけ引いた目で見ている。
今、ひとりの人も、そうでない人も、うまく表すことの出来ない不安な気持ち
や、怒りや小さな幸せをこの日記のなかに見つけることが出来るだろう。
(オススメ人・あめ)

◆『インド日記 牛とコンピュータの国から』小熊英二著 新曜社
「日本」および「日本人」とは何か、著者はその概念を歴史的に問い直してき
た。本書は客員教授としてインドに滞在した2ヶ月間の日記である。量がすご
い。1日平均5千字以上。街を歩き、出会う人々を通して、教育、貧困、差別、
芸術、宗教、フェミニズム……と縦横無尽に「近代」や「国家」をめぐって思
考が展開される。学術的な知識と眼前の状況とが交錯するさまにわくわくし、
勉強はムダじゃないと勇気づけられる。柔軟さを保ったどこまでも真面目なあ
り方と徐々に明らかになる変なキャラクターに嬉しくなる。素朴な質問で国際
会議を騒然とさせ、スラムの子供たちの前で真剣にダンスもしちゃうのだ。
(オススメ人・そのは)

◆『チーズはどこへ消えた?』スペンサー・ジョンソン著 扶桑社
変化というのはなんかめんどくさい、ような感じがする。
とりあえず、とりあえず。このままでいいじゃない、今のままでなんとかなる
じゃない。でも、でも今が永遠に続くわけじゃない。今はいつも一瞬で消え去
ってしまう。
水の流れだって空気の流れだって自分の体内だって、今の状態は、今この一瞬
しかない。変化は必ず起こるものなのだから、心配するよりどうせなら楽しん
だほうがいいに決まっている。常に変化を楽しめる心の状態であれば、人生は
こんなにも素晴らしい。(オススメ人・ぴょん吉)

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作家保坂和志さんの作品を題材にしたメールマガジンです。でも書評のメルマ
ガではありません。保坂和志さんを研究(?)するメルマガでもありません。作
品の感想を書くことはあると思いますが、感想だけではありません。
それじゃいったい何なんだ? 発行人「あかま」のつぶやき? 読者の方との
交流? なんでもありのメルマガ? 発行人・ぴょんかつ、こと(あかま)
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■編集後記
 ●とにかく出せた。あースッキリ、、?、なんの話。(がぶがぶ)
 ●さあキャンプも終盤に突入だ。今年こそ!!(ほさか)
 ●トネリコに小さな葉っぱがいっぱい出てきた。すごくうれしい!(けいと)
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発行人・高瀬がぶん/編集長・春野景都/スーパーバイザー・保坂和志 
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