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稲村月記 vol.15 高瀬がぶん 

「コーヒー無礼講」


6月中は困ったことにW杯のせいと雨のせいもあって、ほとんど外出することがなく、したがって稲村月記で取り上げるような取材をすることができずに終わってしまった。
まー、新参のチビ猫フガちゃんを取り上げてもいいんだけれど、それはやっぱり親馬鹿みたいでイヤだし、この際だから写真はとりやめて、ある日の出来事をたらたらと書いてみることにした。
ほんとにようやく雨が途切れた6月28日。
特に用はないのだけれど、今日はサッカーもないし、、、ということで藤沢にでかけてみた。
こういう時はパチンコと相場が決まっているのだけれど、その前にまずはコーヒーでも飲むべし。
時間はもう午後一時だけれど、まだ朝からなにも食べていない。といっても、だいたいそれが普通で、コーヒーとタバコ以外、初めてなにか口に入れるのは、たいてい午後三時とか四時とかになる。
で、藤沢の東急ハンズの前にあるスターバックスにバイクで直行。
タバコが吸えないコーヒーショップが普通になりつつあるのは実に困ったもんだが、スタバの店内ではとにかくタバコが吸えないので、しょうがないから外のテーブル席に移動する。それにしても、スタバのロング、あんな大量のコーヒーをいったい誰が飲むんだろう、などと常々不思議に思っていたのだけれど、なんのことはない、外のテーブル席にいた20才前後の二人連れの女の子が、自分の顔の長さくらいあるコーヒーカップをそれぞれ目の前に置いていた。最初はそのことにえらく感心して、ちょっと二人が気になっていたんだけれど、たまたま隣のテーブル席しか空いていなかったので、そこに座りそれとなくチラチラ見ていた私。もちろん、アレをほんとうに全部飲み干すのかどうか見極めてやろうと。
ところが、そのうち二人のアホっぽい会話が面白くて、ついつい耳も傾けてしまった。
(言葉遣いは必ずしも正確に再現されていないかもしれない)

「・・・・だからさ、高田のバカがさ」
「キャハー、ははは」
「なによなによ!」
「だってぇ、高田のバカだって、きゃはははー」
「だからなんなのよー、バカじゃん、高田って」
「そうじゃないって、、高田のバカって、高田の馬場と似てなくない?」
「・・・・ギャー、似てる似てる、ギャー!」
「で、どーしたの? その高田の馬場が、、キャーーハハハ」
「酔っぱらってブロックに鼻ぶつけて血ぃ出しちゃってさ」
「ははは、ばーかばーか、ばか女」
「そんでさ、『誰か脱脂綿持ってない?』とかいうのよ」
「脱脂綿言うな! 脱脂綿!」
「だよねぇ、コットンじゃんふつう」
「なんか変、だっしめん、、って」
「だっしめん、、きゃははは」
「あとさ、意味ないけど『タートルネック』って言葉もなんかおかしくない?」
「ははは、タートルネック、、包茎手術の宣伝モデルが着てるつーの、それは」
「そそ、そんでさ、決まって情けない顔してのよね」
「ボク、自信がねぇっす・・・・みたいな」
「ぎゃはははは」
それにしても二人はそんな話をでかーい声で、周囲をはばからず、といっても周囲にいるのはボク一人だけだったけれど、とにかくボクは、彼女たちにはばかられる対象ではないようだった。同世代の若い男がそばにいたなら、おそらく、はばかっちゃったりするんだろうと思われた。
で、それからしばらくはボクの知らない、しかも興味のない話題で盛り上がっていた二人だったが、気がつくと話は再び高田に戻っていた。

「そいえばあいつ前にもさ、『ねぇ、ちり紙(し)ちょーだい』とか言ってたし」
「きゃはは、ちりし、、ケツ拭くわけじゃないんだからさ、ティッシュくらい言いなって! ははは」
「あ、そうそう、ケツで思い出したけどさ、高田ってさー、トイレ行く時にさー、必ず『ちょっとオシッコ行ってくる』って言うのよ。必ずだよー、変じゃーん、それって」
「なにそれ? 意味わかんないぃ」
「だってぇ、オシッコじゃないときも絶対あるはずじゃん!」
「そかそか、きゃはは、変、変!」
「だよねぇ、見栄はってんじゃん」
「きゃーはは、見栄ってあんた、、、でも、すげー見栄!」
「関係ないけどさ、あ、あるかな? まいいや、あのさ『べんじょ』ってすごい言葉だと思わない? もう言葉の響きが笑えるよねぇ」
「べんじょ」
「べんじょ、、ははは、意味としてはモロだよねぇ、、でも『便』って・・・・」
「?、オシッコも便? の一種?」
「だよねぇ、でも、なんかイメージちがーう」
「ちがうよねぇ、変えてもらいたいよねぇ」
「うん、こんど言っとく、、高田に」
「ははは、高田に言ってどーすんのっつーの」
「でもさ、あれだね、きっと高田の親とかは『べんじょ紙(がみ)』とか言ってんだよマジに」
「きゃー、『べんじょがみ』すてきー」
「あとさ、トイレのこと『ごふじゃ』とか言うよね」
「『ごふじゃ?』 えー、なにそれ? しらなーい」
「言うのよ『ごふじゃ』って」
「へー、じゃ今度高田に言ってみよ、『ちょっと、ごふじゃ紙貸して』って」
「きゃははは、案外すまーして『はいっ』とか言ったりして」
「あっははは」

・・・・というような私好みのおげれつ(死語)アホ会話が延々と続き、高田に会ってみたくなるし、それはもう飽きないコーヒータイムでした。さ、パチンコ行こーっと。トイレの話だけに、今日はきっと・・・・、あ、やめとこっ!


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